運用、転用の工夫を意図したマンション住戸
一戸の内部が二層になって階段で繋がるメゾネット形のマンションの住戸を 住戸間のコンクリートの壁 床スラブ 天井スラブをそのまま残し 間仕切り壁 内装 設備類すべてを取り去り まったく新しくそのインテリア空間を計画したリフォーム例です
この住まいの床面積は 一階が42.3平方メートル(12.8坪) 二階が49.5平方メートル(14.9坪) 合計91.8平方メートル(27.7坪)で 一般的なマンション住戸の標準からすれば かならずしも狭すぎるという床面積ではないのですが 親子四人が生活する住居として考えると やはり狭いといわざるを得ません
そのため 居間 食堂 キッチン 納戸などと細かく部屋を分ける考え方や生活の方法は不適当ということになります
時には来客をもてなす場にもなり 普段は 食事 家事 休息など生活の場そのものになる一つの大きなスペースを計画し そこでは 食堂の椅子が 楽な姿勢でくつろぐことのできる居間部分のソファと一体になっていたり 通例は予備の物入れにしかすぎない階段下部分も 積極的に家事に必要な備品の収納場所とし しかもその部分を引き出して食卓と一体となった家事スペースとして用いるなど 大きな食卓を中心として 運用の工夫 転用の工夫を考えた生活がおこなわれるようなインテリア空間がほしいのです
さらに そこに生活の匂いがいつもあからさまに出ているのではおもしろくないし いささか寂しいということにもなります となると 狭いヨットの中のインテリアデザインと同じ考え方にだんだんと近づいてくるのです とくに意識して計画したわけではないのですが 心なしかこの住まいのインテリアデザイン そして意図した運用の工夫 転用の工夫の姿は クルージングヨットの場合と似ることになりました
この住まいはメゾネット形なので 一階を大きくワンルームとして 玄関スペース 居間兼食堂スペース キッチンスペースとし 階段を上がり 寝室 子供室 そしてサニタリー とすることで 生活を明確に分けることができました 個室がサニタリーに隣接していて しかも居間 食堂スペースと明確に動線が交叉していない というマンション住居では恵まれた姿です
居間 食堂は巨大家具のイメージ
住まいを包むインテリア空間の形態に合わせた 造り付け収納家具の2つの魅力とは?
マンション住戸のインテリア空間が 必ずしも広いとはいえない場合 生活の機能に合わせて運用 転用が便利に出来るように入念に計画された造り付け家具によって構成する という考え方があります
床 壁 天井 そしてその中にそれらと一体となってつくられている造り付け家具 これらの一つ一つが部材となって あたかも巨大な家具を形づくっているかのような姿が この住まいの居間 食堂のインテリア空間です
天井 床 造り付け家具はチーク材でつくられ 高さを低めに押さえてシリンダー状の曲面とした天井のデザインと共に まるで大きな家具の内側で生活をしているような雰囲気です これはまたクルージングヨットの内部のような感覚でもあります
この空間における最大の特徴は 食堂スペースから居間スペースにかけて造られた長さ3メートル余 幅1メートル余の大きなテーブルと 食堂から居間まで続く皮製のシートです
この大きなテーブルは 一番奥に座る人の出入りが容易なように テーブル全体が居間方向に60センチほどスライドするしくみが組み込まれています 食堂部分のテーブルの高さは70センチですが 居間スペースの床レベルを食堂スペースの床レベルより約15センチ上げることにより このテーブルは居間からは約55センチの高さテーブルとして存在するように考えられています
この床のレベル差は 連続する造り付けのシートにも利用されていて 食堂スペースでは座高が45センチとなるのですが 居間スペースではこれが30センチになります クッションは食堂部分では固めに 居間部分では軟らかなウレタンを使ってくつろげるように配慮されています
食堂には上階へ上がる階段が設けられているのですが この階段下部部分を利用して細かな棚がつくられています 一見するとただの飾り棚のようではあるのですが これは部分的に引出すことができ 同じレベルで食卓に繋がりアイロン台になる あるいは中がいくつかに仕切られた小物入れになっている などいろいろのしかけがつくられています
チークのフローリングでつくられた床は この住まいが庭を持つことを利用して 外部につくられた同じ仕様のデッキに繋がり 内部空間が自然に外部空間に連続していきます
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