造り付け収納家具設計

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なぜ 造り付け収納家具なのか

 住宅設計事務所建築家木村俊介が設計をする住宅には 必ず造り付け収納家具が存在します
 

なぜ収納家具を造り付けにするのか?

 それは 一言でいえば 造り付け収納家具は 一棟の住宅を より魅力のある存在にするからです

 今日の住宅においては “もの”を収納する器−うつわ−の存在は機能的に不可欠なものであり 同時に 単に収納自体を機能的に解決するだけでは不充分で というよりも全く別の視点から その器について考える必要が生じてきます

 それは “もの”を収納する器 すなわち収納家具が相当のボリュームとなって室内に存在することになり したがってそれが住宅のインテリアデザインを構成する重要な要素の一つになるからなのです
 そして そのボリュームの存在を 造り付け収納家具としてデザインし造ってゆくことは その住宅の魅力の大きな要素にもなるからなのです 

造り付け収納家具の2つの魅力

 住宅設計事務所建築家木村俊介の設計する住宅の収納家具は造り付けとしたいという理由は 

 1. 造り付け収納家具は その住宅のデザインの流れに基づいた一貫性のある形態 材質 色彩の収納家具であることができるからです

 2. 造り付け収納家具は 二つとして同じ個性はないといわれるそれぞれの家の住まい方に 機能的にぴったりと合わせた収納家具をつくることができるからです

住まいを包むインテリア空間の形態に合わせた家具

 人間の住まいとしての住宅は 単なる8畳の部屋などという形で示されるような単純な四角い箱ではなく 生活を機能的に 感覚的に 知的に包み込むような自由な形態の空間 たとえば吹き抜けの空間であったり 天井であったり 部屋の一部がアルコーブ状にへこんでいたり というような室内空間でありたいと思うのですが
 そういった空間にお仕着せの収納家具を置くのでは それらが互いに惨めな存在となってしまう可能性が多く ぜひともその空間をつくり出す建築家の手によって その空間の一部として 同質のレベルの その空間にふさわしい形態の造り付け家具を造りたいと思うのです
             

小さなクルーザーヨットインテリア空間の造り付け収納家具

 この考え方の典型的な例は クルーザー−クルージングヨット−の内部空間の収納家具にみられます

 全長8メートルぐらいのクルーザーは 立派な動く住まいとしての機能を備えています

 船室部分としてはわずか4メートル×2メートル それに高さが1.7メートルほどの空間の中で2〜3人の人間が生活する機能を備えるのです
 ベッドにトイレに調理の設備に そして食卓も必要ですし その上に海図を広げる机もつくらなければなりません
 もちろん航海に必要な道具類から 食料品 調理用具 雑物 着替え などの衣類等を収納する家具も必要になります
 このような狭い空間ではちょっとしたむだな部分ももったいないということになりますから その空間にぴったりと合った無駄の無い形態の造り付け収納家具を設計し造ることになるのです

 ヨットの内部の収納家具についての考え方は そのまま狭い空間の住宅における収納家具の考え方にあてはめることができます
 壁面の厚みを最大限に利用した収納 ヨットの場合のトイレの便器上部に引き出し式の洗面台をつくる考え方などは 可動にすることによって多目的に狭い空間を使うことができる という意味で 住宅のいろいろな収納家具に応用できます

 このようなヨットのつくりつけ収納家具の考え方のように 狭い最小限住宅ばかりでなく もっと大きな余裕のある住宅の場合にも 細部をおろそかにせず しかも全体の空間の状態を常に頭の中に入れて収納家具を設計すれば その住宅の室内空間の 機能的な デザイン密度は より高くなるにちがいないと思われます

住宅設計事務所 建築家木村俊介のモデルルーム写真1

家具デザインの一貫性

 1棟の住宅収納家具のデザインの一貫性ということは重要です

 造り付け家具でなければならない理由の第一としてあげた 住宅の室内空間との適合性と同じようなことではありますが この場合は一棟の住宅全体に流れる一つのデザインの流れ 主張といったものにそった収納家具をつくるということです

 一棟の住宅はその住宅固有のデザインの考え方でできているはずですが 収納家具だけがその住宅を構成する基本的なデザインの流れと異質なものである場合 その住宅全体から見るとデザイン的に大きな破綻を生じてしまうということにもなりかねません

 たとえば 装飾のない単純なデザインでつくられている家の中に 装飾性の多い複雑なデザインの収納家具が置いてある場合 たとえその家具が高価な物で そのもの一つだけ取り出してみればすばらしい価値のあるものであったとしても 全体として見るとちぐはぐな存在となることがあります

 一棟の住宅のデザインは その外観から外部の仕上げに使われる材料 内部の構成 収納家具から食器の一つにいたるまで 一本の筋の通った考え方で貫かれるべきです

 出来上がっている既製の収納家具を選択する道はありますが インテリア空間に占めるボリュームの大きさが その選択に妥協を拒めば拒むほど選択の機会をせばめます
 求めるデザインの収納家具を見つけることの出来る機会はとても少ないのです

 そのような意味で でき上がっている収納家具を選択するよりは その住宅のデザインに合わせてつくる造り付け収納家具のほうが より求める住まいづくりへの近道であるともいえるようです

住宅設計事例 06. ダイニング
住宅設計事例 06. ダイニングキッチン

機能に合わせた家具

 収納家具の機能的な面においても 造り付け収納家具は大きな利点を持っています

 それぞれの家の家族構成 住まい方などによって その収納の方法も千差万別のはずですから それぞれの家の収納の機能を充分に満足させるように設計するとすれば 個々にデザインされた 機能に合った収納家具でなければならないということになります

 一般に市販されている既製品の収納家具は ある程度の使われる幅を考えてつくられています
 それは 細かいところでいろいろな異なる機能を最大公約的に満足させなければならないという宿命を持っているからで 機能的にうまくぴったり合うものがあればいいのですが そうでない場合は我慢をして使うということになってしまいます

 一方 個々の機能に合わせて造り付け収納家具をつくるとすれば 機能的に非常に便利な 使いやすい住宅が実現することにもなります その意味で 造り付け収納家具を計画することの最大の目的はこの点にあるということがわかります

住宅設計事例 08. 2世帯住宅設計 2階リビング 住宅設計事例 08. 2世帯住宅設計 2階キッチン

知的な収納計画

 人が住まうということには 単に生物としての人間に必要な巣の機能のほかに 知的な生活の機能があります

 巣の機能から要求されてくる収納は どのような住まい方の場合でも同じような形になるはずなのですが 現実には その収納の方法にその住人特有の考え方があらわれることになり その形態がそれぞれ特有のものとして異なった形で収納家具ができてゆくようです
 まして その知的な生活部分の収納については 一つとして同じものがないといえるほど 個々の住まいによって異なってくるわけですから この点からも そこに造り付け収納家具を個々に計画しデザインするという意味が強くあるのです

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